いまから6年前の話。
当時の私は21歳で、イベントなどを手がける小さな会社に勤めていた。
そのころちょうど付き合っていた男と別れたばかり(のちに復縁し結婚することになる)で、「もうあたいは一人で生きて行くんだ」みたいな決意をしていたときだったので、わりと一所懸命に働いていた。
年越しもイベントに駆り出されて休めなかったため、その代休として、年が明けて少ししたころに連休をもらった。
せっかくの連休だしどこかに行きたいなあ、などと思いつつも、彼氏とは別れてしまったし、友達もあまりいないし、なんだかもう切なくて泣きそうな感じだったのだけれど、もう私は一人で生きて行くって決めたもん、はなこ強い子だもん、と自分に言いきかせ、ここは大人の女として、思いきってひとり旅に出ようと思いついたのだ。
どこへ行こうかという候補として1番にあがってきたのは、日本三景のひとつ、「松島」だった。
「なんかきれいなもん見て感動したい」という単純な理由だ。
そうだ。宮城行こう。
東京から近いしな!仙台には牛タンあるしな!温泉もあるしサイコーやん!みたいな感じで想像したらとてもテンションがわっふるしてきたので、これはもう行くしかないと思って松島・仙台コースをめぐることに決定した。
連休の2日前くらい、上司から「連休何するのん」と聞かれたので、「ひとりで仙台と松島に行きます」と言ったら、「いいじゃんいいじゃん」などと言って上司の方が盛り上がってきてしまい、カタカタと何か調べ出したと思ったら、『ドリーム政宗号』とかいうとても寝心地の良さそうな響きの夜間高速バスを調べてくれて、「これ乗ってけ」と勧められたので、はいはいと素直に予約した。
これで準備は整った。
そしていよいよ旅立ちの日、仕事を終えた私はその足で新宿に向かい、2分後に君が来るわけでもないので、そのままひとりで『ドリーム政宗号』に乗車した。
左手にしっかりと『るるぶ』を握りしめて。
初めての高速バスに興奮して、用意しておいたチップスターをさっそく取り出し、ポリポリと食べながら遠足気分を満喫した。
しかしバスは走り出してすぐに消灯してしまい、こっそり食べようとすると「パリ…パリパリ…」と車内にチップス音が響きわたる様子だったので、私はチップスターを泣く泣くかばんにしまい込んだ。
その後、途中2度ほどの休憩タイムで一服(&チップスター)した以外は寝て過ごすことができた。
そして朝の5時、仙台に到着。
あたりは真っ暗。
私はそのときに気づいた。
「私これからどうすればいいの?」
なにも考えず、上司に言われるがまま『ドリーム政宗号』に乗って朝5時に仙台に着いた私は全くのノープランであった。
ささささ寒い。1月の東北地方である。
どこか中に入りたかったので、仙台着いてから初の観光場所として私が選んだのは、暗闇の中で煌煌と光りを放つ『マクドナルド』だった。
極寒の地でなぜか冷たいアイスティーを注文した私は、先ほどから握りしめていた『るるぶ』を広げ、今後の対策を練った。
そしてすぐに「私は神の子か」というくらいの名案を思いついた。
そうだ、松島で朝日を見よう。
これは名案すぎる。わくわくがとまらない。
私は自分のひらめきの素晴らしさに慄いた。
そうと決まれば、急いで松島に向かわねば。
「ぼくとこの先の〜海へ〜朝日を見に行こ〜よ〜」
私は一人でSMAPの「朝日を見に行こうよ」を歌いながら、興奮のあまり少し変態チックな動きで、松島行きの電車に飛び乗った。
「ほらオレンジ色〜の〜海がきれい〜でしょ〜」
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ツイッターもやってるよ。
きのうSMAPのライブ観にいって確信したんだけど、ピンクのスーツを着るのが許される日本人男性は、林家ぺーと松岡修造と中居正広の3人だけだなって思った
— はなこ (@hanako55211) September 7, 2014