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酒をよく飲みすぎてしまう人です。7歳の娘がいます。

6年前はじめてひとり旅したときの話【仙台・完結編】

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6年前はじめてひとり旅したときの話【出発編】
6年前はじめてひとり旅したときの話【松島編】
6年前はじめてひとり旅したときの話【仙台編】
のつづき。

**

イケメガネ(イケメンメガネ店員)に別れを告げた私はタクシーで宿に帰ることにした。
夜もだいぶ深まっていたが、仙台の街はまだまだ眠らない様子だった。

私はその一角に止まるタクシーに乗り込んだ。
宿の名前を告げて、ふうと息をついた。

「観光ですか?」
タクシーの運転手は言った。

「そうです。」
私は答えた。

そしてまた『あの言葉』を口にした。

「東京からひとりで来たんです。」←何度でも言いたい。

すると運転手はやはりビックリした様子だったので、またもや私は鼻高々になった。

そしてその運転手は、観光案内人としての血が騒いだのか、「青葉城跡には行った?」と聞いてきた。
伊達政宗像のあるところだ。

「行ってないですね。」

「じゃあ今から行ってみる?ここから近いし、あそこ夜でも入れるよ。」

「えっそうなんだ、じゃあお願いします。」

気のいいおっちゃん、といった風貌の運転手はウキウキした様子で車を走らせた。
今日はよほど退屈だったのだろうか。

なにやらすごい坂を登って目的地に辿り着いた。

「メーターは止めておくからね」と言われたので安心した。
私は運転手とともに伊達政宗像のところまで行った。

像の前まで来て「おお。」とか「ふむ。」とか言ったあと、運転手に写真を撮るようお願いした。

「ん?これどこ押すの?え?ここ?ああ、ここね。ハイ!チーズ!」


「こっち見てごらん〜夜景がキレイだよ〜!」
運転手はとても愛嬌があり、動物で言うとたぬきに似ていて、なにやらとても愉快な人だった。
酔っ払っていたこともあり、私はなんだかとても楽しくなってきた。

 

上手く撮れなかった夜景↓
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タクシーに戻ると、「次はあそこ行こうか〜!」みたいに彼は次々と提案してきた。
私は仙台マジックにかかっていたので、なんだか楽しい気持ちで「いいね!行こう行こう!」と提案にのった。

市内を少し巡ったところで、「もう今日は貸切にしちゃおうか?」「一万円でいいよ」みたいな恐喝をしてきたので、私は「いいよ!一万円払うよ!」と二つ返事で応じた。←酔うと財布の紐が緩くなるタイプ

「じゃあ少し遠いところまで行こう〜!」

「お〜!」

「あ、おっちゃん、ちょっと止めて。ビール買ってくる。」

私はコンビニで追加のビールを買い、車内で宴会を始めた。
今はどうか知らないが、当時の仙台のタクシーは喫煙OKだったので、煙草も吸い放題で大変リラックスすることができた。

「おっちゃんも吸っていいかい?」とワガママを言ってきたので、「いいよ!」と応じた。

そのあとも色々な所に連れて行ってもらったが、あいにくほとんど覚えていない。(写真を見て「これどこだっけ」ってなってる)

 

どこで撮ったかさっぱり分からない写真↓
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すごい良く覚えているのが、めちゃくちゃでっかいダムに連れて行ってもらったことだ。

ダム付近に車を止め、雪が深く積った道をザクザク歩くと(これも楽しかった)、そこには一面真っ黒の巨大なダムがあった。
ゴオー!と力強い音がして、さながらブラックホールのようであった。
私はとにかく「すごい!」を連発した。

 

ダムを撮ったつもりの写真↓
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だいぶ雪も降っていて寒かったが、あえて外に出たまま煙草を吸うことにした。

ライターを何度かカチカチ言わせて火をつけ、おっちゃんと一緒に煙草をふかした。

手はすぐに凍った。
頭に雪が積った。
足がガクガク震えた。

そんな中で吸う煙草はクソほど美味かった。

「最高だね。」

私は同じく頭に雪を積もらせてガタガタ震えるおっちゃんに向かってそう言った。

 

その後はさっさと車に入り、来た道を戻った。
空は少しずつ明るくなり、私たちは朝を迎えた。

私の泊まる宿に着くと、私はおっちゃんに約束の一万円を渡し、おっちゃんは名刺をくれた。
「今度は昼間に来なよ、まだまだ案内したいところが沢山あるからね。」と言ってくれたので、私は、「うん、絶対来るね」と言って手を振った。

部屋に着くなり私はそのままの姿でベッドに倒れ、眠った。

とても長い1日だった。

**

チェックアウト寸前に目覚めた私は、まんまとホテルの朝食バイキングを食べ損ねた。(楽しみにしていたのに!)

仕方がないので近くの喫茶店で朝食を食べた。
2日目の今日は、特にやりたいこともなかったので、仙台から電車で少し行ったところの温泉施設でゆっくりすることにした。

結論から言うと、子供連れが多くて騒がしく、全くゆっくり出来なかったのだが。

しかもその帰り道、強風で電車が止まるというハプニングもあった。

何もない駅(本当に何もない)で何時間も待つことになったが、不思議と不便は感じなかった。
ゆったりとした時間の流れのなか、ホームのベンチに座って本を読んで過ごした。

無事に電車が動き出せば、この旅も終わりである。
初めてのひとり旅、この旅に点数をつけるとするならば、文句なしの120点だ。

 

少し名残惜しい気持ちで、旅の途中にデジカメで撮った写真たちを見返してみた。

松島に行ったのがずっと前の出来事のように感じられた。

1枚ずつ画像をスライドさせてゆく。

すると、ふと、1枚の写真が目に止まった。

 

「あれ?」


これはきのう、タクシーのおっちゃんが青葉城跡で撮ってくれたものだ。

彼は私にとても楽しい経験をさせてくれた。
きっと一生忘れることのない、大切な思い出になるだろう。

その彼が撮った写真。


そこには、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊達政宗像が写っていなかった。

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近い近い。撮る位置が近すぎるよ。

 

 

 

 

 


「おっちゃん、観光案内人失格じゃんか。」
心の中でつぶやいてみた。

 


いやあごめんごめん、と能天気に笑う彼の姿が思い浮かんで、私は誰もいないホームで「あはは」と声を出して笑った。

 

 

 

 

6年前はじめてひとり旅したときの話、おしまい。